木力館ブログ

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「伝統的構法の設計法及び性能検証実験」参加

 11月もいよいよあと2日、まもなく師走です。皆様いかがお過ごしですか。

 今回は、先日行った実験の視察について、お話しをしようと思います。
 私(おやじ)は先日26日から28日にかけて、兵庫県へと向かいました。(独)防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センターで行われた「伝統的構法の設計法及び性能検証実験」の震動実験に参加する為です。この実験は伝統的な工法によりつくられた実物大の建物模型に人工的な震動を加え、その状況や経過、損傷の度合いなどを詳細に調査研究するためのものです。
 私(おやじ)はこの「伝統的構法の設計法及び性能検証実験 検討委員会」の関連課題作業チーム(TT)材料問題の研究TT実務者メンバーとして、実験に参加しました。ちなみに材料問題の研究TTのリーダーには、国土交通省の方が就かれております。

 さて、日本の伝統的工法による木造建築物の実験の様子とそのを記したいと思います。

 (実験棟の様子です)

 建物は六間×三間(10.8m×5.4m)のつくりで、写真の通り実物大ですので、実際に人が住める建物とまったく同じ間取り、つくりになっております。これに最大で阪神・淡路大震災時に起きたものと同規模の震動を加えて損傷の程度を観察しました。

(加震による影響を調べる関係者)

 震動を加えた時の建物は、まるでこのままひっくり返ってしまうのではないかと思える程凄まじいものでした。特に阪神・淡路大震災と同規模の震動を加えた時は、まるで建物全体を瓶に入れて巨人がそれをシェイクする様な、異常とも言えるものでした。部屋の中に居たら、周囲に家具など何もなくても震動の激しさだけで負傷するのではと思ってしまう程です。

 加震後の状況調査で判明したのは、伝統的工法による建物は予想以上に強かった、という事です。まず、激しい震動を加えても部分的な損傷こそあれ、構造物自体には損傷が余りみられず、しっかりと建っていたという点が挙げられます。
 2日目には阪神・淡路大震災と同規模の加震実験が行われましたが、その時ですら1階壁面のひび割れ、剥離崩落や柱四本の折れがみられた程度です。2階部分の壁面に至ってはひび割れが見られた程度で、建物自体は倒壊する事なく、しっかりと建っていました。

 この事は、現代の建築基準法で考えても、伝統的な工法の建物は強い、と言えるのではないでしょうか。勿論「つよさ」の基準が違うと言うご意見も有るでしょうが、仰る通り、伝統的工法は「耐震」よりも「免震」的な強さを発揮します。それはどういうことかといいますと、建物自体が木の持つ粘り強さを保ち、構造そのものが外からの力に対して粘り強くはたらき、多少構造が動く事により、力を分散・吸収し、なおかつしっかりと受け止めるということです。今回の実験でも、倒れそうで倒れないと言う粘り強さをみせました。最新のビルなどの構造では免震工法を取り入れているものが有りますが、伝統的工法はまさにこれと似たような仕組みを持っているといえます。

 私(おやじ)が実際にみた感じでは、仕口の(伝統工法で使われる)長ホゾによる部分が大きかったのではと思います。柱を貫通するほどに長く太い長ホゾが木と木を組合せ縫い合わせたような構造のおかげで、加震にも耐え、抜けずに粘り強く持ったのではないかと考えます。一般的なプレカット工法にみられる短ホゾでは、これ程粘り強く耐え続ける事は不可能だったのではと思えて仕方ありません。短いホゾでは、強い震動を受けるとすっぽ抜けてしまい構造体が壊れてしまうのではと感じました。勿論短ホゾにはほぼ必ず固定用の金物が取り付けられますが、木と金物の相性は良くありません。(作った直後はともかく)果たしてここまで持ちこたえられるかどうか少々疑問に思いました。

 私(おやじ)はこうした大規模な震動実験の参加は初ですが、その規模と迫力にただただ圧倒されました。
 今回試験が行われた兵庫耐震工学研究センターは日本全国でも最大規模を誇る施設で、木造施設のほか、鉄筋やコンクリートの建物やビル、構造物も試験が可能との事です。その為巨大なクレーンを備えており、なんと400tもの重量を持ち上げる事が可能です。

 (400t吊り上げ可能なクレーン)

 その大きさにはただただ圧倒されるばかりです。
 さて、私(おやじ)はふたたび12月初旬に2回目の実験にも参加することとなりました。建物には「関東間」と「関西間」があり、関東と関西では寸尺が微妙に異なります。これらを2回に分けて全く同じ状況・環境下で実験し、違いを比較するのです。1回目の試験では関東間を使った建物ですが、2回目は関西間を使った建物で実験を行います。微妙なスケールの違いが、どの程度影響するのか気になるところです。

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