館長 木を語る

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12.「柱の見える家づくり」のススメ

今時の木造住宅を思い浮かべてみてください。柱が見える家はありますか? 殆どの家が、柱や構造駆体が壁に隠れてしまっていると思います。これを大壁(おおかべ)造りと言います。これは本来の伝統建築ではありません。
本来の、日本伝統の木造住宅は、柱が見える家づくり、真壁(しんかべ)造りが主流でした。

木力館館内2階、真壁造り。

大壁造りの様に、柱が見えない家だと、どこにどんな材を使っているか外から見ても分からないです。何故こう言う造りになったかと言うと、大壁造りは、コストダウンの為、工期短縮の為、技術のない大工さんでもそこそこの出来になる為、多用されているのです。洋室が多くなったのも理由のひとつですが。

しかし、どんな材をどのように使っているか分からない家は、住んでいて安心感があるでしょうか? 建物が完成したら、壁の内側を見る訳にもいきません。あなたはどう思いますか?

真壁造りは、柱を見せる造りなので、大工さんの高度な技術が要求されます。木のクセを見極める高い技術と豊富な経験も求められます。当然、ヘタな大工がやると壁と柱の間に隙間が空いたりする。腕の良い大工さんなら、寸分の狂い無く、見事に仕上げる事ができます。
しかし現在、真壁造りはコストアップに繋がるからと敬遠されます。大工さんの手間や施工期間を一日でも短縮しようとする住宅の「コストダウン」化の流れでは、こうした伝統の技、優れた経験と技術は真っ先に排除されてしまうのです。

本来、真壁造りは、柱が見える造りで、また同時に「魅せる」造りでもありました。骨太な部材を使う事による心地良さ、安心感が生まれる訳です。昔の民家の大黒柱は、文字通り太い柱で家を支えました。これが直接見てわかる安心感、と館長の私(材木屋のおやじ)は考えます。
真壁造りの家は、壁も漆喰や珪藻土、木材の壁などを使います。木の壁も市松模様張りや杢目の美しい材を使います。全体に自然素材を使う訳です。自然素材は室内の緩やかな湿度調節を行いますので、快適で、体にも良いと思います。古民家の居心地の良さなども、理由のひとつです。

真壁造りの家の一例。

これからは「柱の見える」家づくりを復活させたいと、館長の私(材木屋のおやじ)は考えます。住まいを見直したいのです。それには、ただ「安いから」と新建材を使うのではなく、せめて柱や構造駆体には本物の木、無垢材を使うべきだと考えます。
出来れば、柱を自分の好みで選べる工務店さんが良いです。更に言うなら、構造駆体の加工(刻み)の現場を見られる・見せてくれる工務店さんの方が良いです。自分の家に使われる材がどのように加工されていくか、行程を見る事も、将来出来た家に対して愛着が湧くと思います。

その為には、木を五感で体感して知る必要が有ります。構造駆体なら手で触れた肌触りや温もり、床材なら踏んでみた感触、そして木の香り……。五感で体感して木の良さを知る事が一番です。

五感で体感する事は何故重要か。写真を見たり、文章を読むだけでは、自分の「体感による経験」ではないからです。例えば木の香りを言葉だけで説明するのは難しいです。相手に伝えようとしても、相手が現物を嗅いだ経験がなければ、どんな香りか分からないままで終わってしまいます。
実際にあなたが本物のヒノキの香りを嗅いで「これがヒノキの香りだ!」と体感しなければ、本当の良さは分からないのです。そして同じ様に、木の種類による香りの違い、また同じ木でも樹齢による香りの強弱など、五感で体感して初めて分かる事は多いのです。
あなたもぜひ、木力館へお越し頂き、本物の木を五感で体感してください。

木の良さ、木の選び方が分からなければ、お気軽に館長の私(材木屋のおやじ)までご相談ください。詳しく、そして分かり易く、アドバイス致します。